墓石の形や大きさに決まりはありませんので、原則的に予算が許せば自由に形を決めることが出来ます。
しかし、墓地には区画が定められていますので、その区画に収まる大きさということになります。
また、墓地によっては形式についてある程度の規制をしている場合もあります。
人々の考えや好みの多様化により、墓石の形態も変化してきました。従来の伝統を重んじる形式、信仰している宗教や現代の生活にあった形式から、自分の思いを一番表せるお墓の形を選びたいですね。
江戸時代から広く使われてる伝統的で最も普及している墓石です。
現在も日本の墓地の多くはこの和型です。
見た目も安定感がって美しく、さらに昔からのお墓ということで親しみやすさがあるからでしょう。
しかし、時代とともに和型墓石も様々な加工が加えられ、最近は伝統的な外観ながらもモダンさを取り入れたものもあります。
一番上に家名などを彫る竿石、次いで上台石、中台石、そして一番下に芝石(下台石)といわれる敷石を置いた四段構造(和型四段構造)、あるいは敷石を置かない三段構造(和型三段構造)が基本構造です。蓮華台の付いた蓮華型や、伏せ蓮華(返り花)の付いた上下蓮華型があります。サイズは、棹幅8寸から1尺3寸までが一般的です。
加工一覧 ※地方により、細部の加工は異なります。
棹(さお)前面部 | 額出(がくだし) | |
額抜(がくぬき) | ||
棹上部 | 香箱(こうばこ)型 | お香を焚く香炉等の蓋の曲線を模した形 |
丸型 | ||
位牌型 | 棹上部の両端に曲線が入り、位牌を模した形 | |
櫛型 | ゆるい半月形で、櫛の背の形(かまぼこ型) | |
トキン型(神道型) | 頭巾を思い出させる独特な形 | |
丸角型 | 丸みを帯びた、なだらかなカーブが特徴 | |
棹前面上部 | 出紋 | 正面上部に家紋が入り、歴史を感じさせるもの |
額縁 | 刻まれた文字が、額縁に収められた絵のように見える | |
銀杏面 | 角を一段落とし、丸面にしたもの | |
特殊加工(スリン) ※棹石と上台の間に入る石碑の飾り | 角スリン | |
丸スリン | 棹石に座布団を引いたように見える、一般的な形 | |
上蓮華 | 蓮の花が上を向いたような加工 | |
蓮華 | 蓮華の花をかたどった意匠形式 | |
上台 | 亀腹(かめばら) | 亀のお腹を彷彿とさせる、ゆったりと膨らんだ曲線が特徴 |
切出(きりだし)亀腹 | 亀腹と同じゆったりとした曲線と、階段状な点が特徴 | |
水垂(みずだれ) | 水を流しきるための勾配がついたもの | |
銀杏面 | 角を一段落とし、丸面にしたもの | |
蓮華 | 西方極楽浄土の花と云われる、蓮華の花をかたどる意匠形式 | |
中台 | 水垂 | 水を流しきるための勾配がついたもの |
銀杏面 | 角を一段落とし、丸面にしたもの |
和型の石塔あれこれ
・宗旨宗派が決まっている
和型と洋型のデザインを兼ね備えた墓石です。
『和』部分の縦型デザインや蓮華、『洋』部分の幅広の棹石が特徴的です。
最近、若い方や寿陵で建立される方に多く選ばれています。
・神道型
神徒の方のお墓です。
仏教型との大きな違いは、蓮華台や香炉が無いことや棹石の頂上を四角錐にすることなどです。
一般的に、棹石は仏教型より長く、『○○家之奥都城(奥津城)』と彫ることが多いです。その他、鳥居や墳(半球)を設置することもあります。
・五輪塔
『空、風、火、水、地』この5つを五大と言います。
五大は宇宙の原則であり、この『五大』を表したのが五輪塔です。
昔から、個人が成仏し往生できる供養塔として伝えられてきました。
その歴史は古く、現代の和型墓石よりも遙かに長い間、形を変えずに今も建立され続けています。
・宝篋印塔
『宝篋院陀羅尼経』という御経を塔の中に安置し礼拝することで極楽往生できるとして伝えられてきた仏塔です。
古くから五輪塔と同じく遺骨を安置する供養塔として建立されています。
見た目がモダンで、お墓としての格調も高いので、最近増えているようです。
ひとことで言えば、ガーデニング霊園や西洋風霊園の出現によって登場した墓石と言えるでしょう。
また芝生に直接、洋型の墓石を置く芝生墓地も最近では多く見られるようになりました。洋型墓石をオルガン型と呼ぶ人もいます。
この他、ストレート型、さらにはアメリカでよく見かけるプレート型などがあります。
洋型墓石には家名ではなく、「愛」や「心」といった自分の好きな文字を彫ったり、レリーフを施す方もいます。それがよく似合うのが洋型墓石の特徴です。
加工一覧
棹上部 | 天端R加工 | 棹上部にR(半径の意味)加工が施される |
香箱加工 | 両端の曲線が、「八」のようなカーブを描いているのが特徴 | |
額出加工 | ||
かまぼこ型 | ||
アート型加工 | 滑らかな曲線が印象的な、芸術性の高いもの | |
木瓜型加工 | 木瓜(ぼけ)の花弁のような両端が特徴的 | |
くり面加工 | 面取り加工の一つで、面をえぐる加工のこと | |
棹部 | 額縁加工 | 文字彫刻を額縁で囲み、一枚の絵のように見せるタイプ |
出紋加工 | 正面上部に家紋が入り、歴史を感じさせる | |
中台 | 水垂加工 | 水を流しきるための勾配がついたもの |
亀腹加工 | 亀のお腹を彷彿とさせる、ゆったりと膨らんだ曲線が特徴 | |
切出亀腹加工 | 亀腹と同じゆったりとした曲線と、階段状な点が特徴 | |
洋台部 | 水垂 | 水を流しきるための勾配がついたもの |
自由な発想で、個性を前面に出したモニュメントのような墓石も目につくようになりました。
将棋が好きだった事から将棋盤の形をしたお墓、お酒好きだった故人を偲んで徳利型のお墓も登場しています。
故人の自然観や宇宙観を表現した形もあります。ニューデザインの墓石が登場した背景には、人生の「総仕上げ」としてのお墓も自分らしくありたい、という強い思いがあるようです。
「死後を含む自己決定権」という考えが、お墓の世界にも入ってきたといえます。
最近では、コンピュータを使って、お客さまにデザインを提案する所も増えてきました。完成品に近い状態で設計されたお墓を見ることができるので、オリジナルデザインのお墓を作る場合はとても便利です。
隣接するお墓との境界を明確にするのが境界石と外柵で、様々な形式があります。
境界石は巻石・境石と呼ばれ、流水などを防ぐ役目もします。
地域により結界とも呼ばれ、墓地内を石で囲み清浄に保つためとされています。
一般的には簡単な延べ石を敷きますが、いくつかの部位によって構成され、入り口を設けたもの、高さ数10cmの舞台式、階段式などがあります。
門柱や玉垣と呼ばれる外柵をつけた豪華なものもあります。また、隣に他の墓地がある場合と角地の場合では仕上げが違います。
風雨によって墓所の地くずれや陥没がないように、基礎をしっかりさせておかなければなりません。
遺骨を納める納骨室のことです。
関東地方、九州地方は骨壷のまま納棺しますが、中部・関西・中国地区などでは焼骨を土に還す形を取ります。
このため関東地区等の納骨棺は一定規模の容積が必要となります。骨壷が大きな地域では地上式の納骨棺が普及しています。
・墓誌
故人一人一人の戒名や生年月日、没年、享年、俗名や生前の経歴などを刻むものです。霊標、戒名板、法名碑などとも呼ばれます。最近のお墓には付属している場合が多いようです。香箱加工、水垂れ加工といった加工方法によっても雰囲気が変わります。
・花立・香炉・水鉢
墓石の前に設置される、欠かせないものです。花立は水鉢の両側に一対設けます。ステンレス製の円筒が長持ちします。香炉にはお線香を立ててお供えする「立置型」、寝かせてお供えする「くりぬき型」があります。水鉢は台石に彫る「切り出しもの」と、別づくりするものとがあります。単にお水を捧げるだけのものではなく、お墓全体を引き立てる重要な付属品です。
・塔婆立
墓石の後ろにある、塔婆を立てるために必要な台です。宗派によっては使用しない場合もあります。
・拝石・敷石
生後まもなくこの世を去った子どもの供養のために建立されます。形としては線彫り、半身彫り、全身彫りの3類があります。
・お地蔵様
お墓の入り口と墓石を結ぶ通路になるのが敷石です。敷石は敷板石、縁石とも呼ばれます。墓石の手前には一回り大きい拝石を埋めます。
・灯籠
墓所全体に対しての献灯。
・つくばい
いわゆる手水鉢(ちょうずばち)です。本来はお墓参りの前に手を洗い、清めるものでしたが、最近では装飾品として置かれることが多いようです。
・玉砂利
墓地内の石のない部分に敷き詰めます。化粧砂利ともいわれます。黒インド、大磯、那智、五色といった種類があります。墓石の色との調和を考えて選ぶと良いでしょう。
・その他
名刺受けや供物台、物置台、それに玉垣あるいは植木などの付属品もありますが、全てを揃える必要はありません。お墓のスペースや予算に応じて考えましょう。
彫刻には様々な方法があります。簡単にですがご説明いたします。
・線彫り
「線彫り」は非常によく使われる彫り方の一つで、細かい線を表現することが出来ます。しかし「線彫り」の性質上、深みのある立体感を出す事は難しいです。
・彫り
線彫りよりも彫る幅や深さが大きくなる為、深みのある立体感が出ます。また、浅く彫ったり深く彫ったりすることで力の入れ具合を表現することも出来ます。
・線彫り浮かし
下の絵を「線彫り」にすると黒い線が彫られ、又「浮かし彫り」にすると黒い線が残ります。デザインを線で表現するので立体感が出にくくなります。「線彫り」と「浮かし彫り」を組み合わせて立体感を出すのが「線彫り浮かし」という彫り方です。
・吹かし
「吹かし」とは色で例えると、彫る所(白色)と、彫らない所(黒色)の中間色(灰色)になります。この技術はどんな石にも使えるのではなく、黒系の色の濃い石には効果的ですが、白系の石ではほとんど見えなくなってしまい、効果はありません。又、色を入れると効果が無くなってしまいます。
・ファントーニ
「ファントーニ彫刻」は、職人により創り出される、完全なるハンドメイドであり、その特徴は、自由なデザイン力と彫刻技法にあります。従来の均一的な方法とは違い、凸凹をつけた彫り方が可能です。ソフトな石肌とダイナミックな立体感が得られます。 一つ一つが手作業であるために、個性的な造型が可能でかつ、コケがつき難い、色あせが無いなど、長く後世に美しさを留める事ができます。 線彫りなどの一般的な彫刻は、色(ペンキ)を入れないと目立たない場合があります。しかし、ファントーニ彫刻は、図柄と彫刻に差をつけた彫刻なので、図柄がはっきりと現れるため、必要ありません。